ドラマ・映画

2012年11月 2日 (金)

夜のとばりの物語(3D・吹替版)感想

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【あらすじ】
 あるビルの一角で年長者の男性と青年、若い女性の3人が物語を創作・上演する。題名は「狼男」「ティ・ジャンと瓜ふたつ姫」「黄金の都と選ばれし者」「タムタム少年」「嘘をつかなかった若者」「鹿になった娘と建築家の息子」の6つ。
 フランスのミッシェル・オスロ監督による、美しい影絵で紡がれる極上の物語。

【感想:繊細な二次元と無理のない三次元の融合】
 この作品では15分前後の短い物語が6つ登場し、すべてが影絵で表現されています。したがって登場人物や動物は全員、黒一色です。従来の3D映画とはその点が違います。

人物や動物、手前の器物や樹木などはあくまで平面の影絵であり、3Dで表現されるのは風景だけです。黒一色の影絵は切り絵のように繊細で美しい。動物の細かい毛並みや、ゆれる樹木の葉、王女や王子たちの装飾品に至るまで丁寧に描かれています。だからこそ観る側は想像力をかき立てられ、影絵に隠された形や色のイメージを無限に広げることができます。

対照的に背後の色は鮮やかです。光を反射して移り変わり、色の濃淡が空気の流れを感じさせてくれます。

これまで3D映画を観ると立体的な効果を狙っているのが透けてちょっと残念だなと思うことがありました。不自然な構図や似たようなシーン(ビルが手前に倒れる/客席に向かってモノが飛ぶ/女性のセクシーショットなど)が目に付くことがあり「無理して3Dにしなくてもいいのでは?」と感じることもありました。


しかし本作は、3D映画のマイナスイメージとは無縁です。「新しいタイプの三次元」をドラマチックに魅せてくれます。

【TVシリーズからの抜粋】
パンフレットによると、本作はもともとTVシリーズとして制作されたそうです。そこから5本を選び、劇場用に3D版を制作したのだとか。短い物語にピリっと皮肉の効いたオチが用意されていて、星新一さんのショートショートや「日本昔ばなし」に共通する面白さがあります。

【すてきな吹替】
ヒロイン役は坂本真綾さん。相手役の青年を逢笠恵祐(あいがさ けいすけ)さん。年長者を金尾哲夫さんほか。

日本語版の翻訳は谷津真理さんです。耳に馴染むセリフ、すてきでした~。ときどき音読みの熟語が入っていて、翻訳者さんのこだわりを感じました。
「映画の吹替版は苦手」という方、ぜひ吹替版でご覧になってくださ
い。

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【ポスターのようなパンフレット】
パンフレットは1ページずつに分かれていて、ミニポスターのようです。どれも額に入れて飾れそうなほど素敵! このパンフレットは買いです。

公式サイトはこちらから 

2012年10月21日 (日)

映画「アシュラ ASURA」

Photo_2           (パンフレットの表紙)

【概要】
舞台は15世紀中期の日本。災害による飢饉と繰り返される戦によって村々は荒廃し、生き地獄と化す。そんななか、1人の赤ん坊が産み落とされ「アシュラ」と名づけられる。1970年に発表された、ジョージ秋山原作のドラマ。

【主なあらすじと感想】※一部ネタバレを含みます
 ボロボロの着物をまとった女性、藤乃は荒れ果てた寺で赤ん坊を産み落とします。この子がアシュラです。間もなく寺には血や肉の匂いを嗅ぎつけた野犬が現れます。すると藤乃はまさかりを振り回し、我が子を必死に守ります。

 辺りは一面焼け野原で、助けてくれる人はいません。生まれたばかりの赤ん坊にとって過酷な状況です。藤乃はアシュラを育てるため歯を食いしばり前を向きますが、2人を取り巻く状況は日増しに悪化します。

 やがて幼い主人公のアシュラは、想像を絶する状況に放り出されます。しかし、簡単に救いの手がさしのべられることはありません。百姓娘の若狭や、さすらいの僧侶「法師」など、アシュラを助ける人々はいます。しかし若狭は生々しい感情を持った1人の女として描かれており、美しいだけの存在ではありません。また法師は人生の師となるものの、アシュラが自ら答えを出すのを辛抱強く見守り続けるため、アシュラは長いあいだ苦しむことになります。

 アシュラを取り巻く厳しい描写は冒頭から続きます。製作陣の覚悟を感じ、見ている途中で何度も圧倒されました。中途半端な甘さとか、軽妙さとは無縁です。物語が進むごとに人間の欲、醜さや狂気が容赦なく暴かれていきます。そこに、この作品の素晴らしさがあります。生きることのすごさを伝えてくれる映画です。

【パンフレットを読んで】
●構想
さとうけいいち監督のインタビューによると、当初は若狭とアシュラを「美女と野獣」のような関係にする構想もあったとか。そうならなくてよかった! 今回の物語を観ることができて良かった!「生きる」をテーマに真っ正面からガチンコ勝負している感じがとても好きです。

●企画意図の文面
「アシュラ」は1
970年、少年誌に掲載されました。しかし描写がショッキングだという理由で社会問題に発展したそうです。このとき少年誌の編集部が企画意図について誌面でコメントを発表したということで、jその全文がパンフレットで紹介されています。

●リアリティ溢れる人物と背景

本作ではCGが使用されています。水彩画の調子のなかに、ライティングや画面の揺れといった効果を取り入れ、よりリアルに表現しているそうです。とくに終盤に大勢登場する村人の描写は迫力があります。これは実際の人間の動きを取り込んでいる(モーションキャプチャー)そうですよ~。

●アシュラの公式サイトはこちらから

2012年10月 7日 (日)

踊る大捜査線 THE FINAL

中学生のころ、地上波のロードショーで『レイダース 失われたアーク』を観ながら「どうして日本映画はつまらないんだろう」と思っていました。しかし1990年代後半、自分のなかの邦画へのイメージを覆す作品が現れました。『踊る大捜査線 THE MOVIE』です。


署員同士の軽妙な会話、小ネタ芝居、軽犯罪事件と、同時並行で起きる重大事件。青島のキメ台詞、永遠のアイドル小泉今日子を惨殺魔に起用した新しさなど、同作は「観たいと思っていた日本映画」そのものでした。


キョンキョン演じる凶悪犯が『羊たちの沈黙』のレクター博士とそっくりでも構わなかった。純粋に楽しめる邦画が出てきたことのほうが嬉しかったです。


しかしそれから5~6年経ち、『踊る~』からは気持ちが離れました。隙のない脚本で社会現象を扱う刑事ドラマ『相棒』を観るにつけ、『踊る~』の軽いノリが鼻につくようになりました。海外ドラマのコミカルな調子を邦画へムリにはめ込んだような違和感を覚え、第3作は見に行きませんでした。


しかし今回は最終作。しかも水野美紀さん演じる雪乃役が復活するというではないですか。これは観に行くしかありません。


署員同士の軽妙な会話、小ネタ芝居、上層部と現場の軋轢、小さな事件と重大事件の同時発生。『踊る~』らしいパターンの展開です。これぞエンタテイメント。分かり易い正統派の娯楽大作です。


軽妙で純粋に楽しめる。そして勧善懲悪。正直なところ教訓とか心に響くとか、深さはない作品かもしれません。でもそれは『踊る~』シリーズが、娯楽の世界に真っ向勝負を挑んだ証しです。「楽しめる映画」を純粋に追及し、実際にこれだけ楽しめる映画を創ったことが何より素晴らしい。『踊る~』のような正統派のエンタテイメント映画があるからこそ、対極にある、人の心をえぐるようなしんどい作品も活きるのではないかと感じました。(生意気にすみません)


『踊る~』は、全く新しい日本の娯楽映画を創ってくれたと感じています。「踊る」チームに感謝。

2012年8月31日 (金)

「人生、ここにあり!」パンフレットのみどころ:

 映画「人生、ここにあり!」のパンフレットは充実の内容です。あらすじや主なキャスト&スタッフの紹介があるのはもちろんですが、とくに素晴らしいのは複数の識者による解説です。ジャーナリストの大熊一夫さん、写真家でライターの石井真弓さんほか、各分野の専門家たちが自分の言葉でイタリアの医療改革について述べています。


 そのなかで何度も登場するのが、バサリア法(バサーリア精神保健法)に関する記述。パンフレットによると、これは精神科医フランコ・バサリア(バサーリア)の働きによって1978年に制定された法律で、精神病院の新設と入院による治療などを廃止したものだそうです。このような法律があるのは世界でもイタリアだけです。


 さらにパンフレットには、主人公ネッロのモデルになったルドルフォ・ジョルジェッティさんのインタビューや組合の現地レポート、大熊一夫さんの入院体験(潜入ルポの一部)も書かれています。


 さらに通訳者で作家の田丸公美子さんのコーナーでは、イタリア語に関する興味深い解説がありました。イタリアでは日本の「狂」にあたる"matto, pazzo, folle"などの言葉がテレビでも日常的に使われているのだそうです! 日本では原則NGですよね……。舞台では聞きますが、テレビではあり得ないかも……。


 唯一、元患者役の俳優陣の名前が網羅されていないのが残念ですが、これは仕方がないのかも……。彼らは知名度にかかわらず、1年以上かけてオーディションで選ばれたのだそうです。もしかしたら本作出演当時は情報がほとんどなかったのかもしれません。イタリアの医療改革については関連本を読み、改めてアップしたいと思います。


※それぞれの肩書きはパンフレットより。
※映画の関連情報はこちらから

2012年8月30日 (木)

「人生、ここにあり!」ジージョ役アンドレア・ボスカ(Andrea Bosca)について

ジージョ役アンドレア・ボスカ(Andrea Bosca)について:

 物語の重要なカギを握る1人、内気で器用な青年ジージョ役を演じているのはアンドレア・ボスカです。尖った顎のライン、つり上がった眉毛とタレ目の作る角度が特徴的。眉毛と目の配置はヤンチャ系イケメンの黄金比を形成しています。海外の映画サイトIMDBによると、生まれは1980年7月14日。2008年「人生、ここにあり」のあと、多くのTVシリーズや映画に出演しているようです。


 その一部をご紹介すると、TVシリーズ「Raccontami(※1:意味:伝える)」「Fuoriclasse(スター選手)」ではレギュラー出演。205分の長編映画"Noi credevamo(信頼)"、2012年公開の" Magnifica presenza(素晴らしき存在)"など、さまざまな作品に名前がクレジットされています。


 全洋画オンラインの情報を見る限り、本作以降に公開されたボスカの出演作はなさそう。イタリア語は不案内のため、英語のサイトを探してみましたが十分な情報が得られませんでした……。残念。英語のソースが見つかり次第、随時追加したいと思います。


※1)映画やシリーズのタイトルはイタリア語→英語翻訳したモノから推測。物語の内容が不明のため、中身とずれている可能性があります。
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2012年8月29日 (水)

「人生、ここにあり!」日本語版制作スタッフ


【字幕版】
・字幕翻訳:岡本太郎

【吹替版】
製作:株式会社 新日本映画社
制作:アクシー株式会社
吹替翻訳:浅野倫子
演出:諏訪優一
調整:小菅学
録音:都築寿文


※DVDパッケージの情報より

(※最初から最後までしゃべりっぱなし。本編は111分とありますので、字幕は1500枚前後でしょうか? 吹替版は裏の声やカブリも多かったので(とくに前半)、台本は200ページ前後かしら……などと想像しながら見ていました……。)

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「人生、ここにあり!」関連小ネタ

映画「人生、ここにあり」のあらすじ紹介で「『エンジェル・アット・マイ・テーブル(1991年/フランス映画)』や『カッコーの巣の上で(1975年/アメリカ)』と共通するジャンルの物語」と書きました。

古くて煤けていますが、「エンジェル・アット・マイ・テーブル」のパンフレットを引っ張り出してきました~。こんな感じで~す。当時のパンフレットには監督やキャストインタビュー、チラシのほか、劇場字幕に状況説明を加えたシナリオ版が収録されています。超豪華!Photo

映画「人生、ここにあり!」オリジナル・キャスト

ネッロ:クラウディオ・ビジオ(Claudio Bisio)
※物語の主人公

サラ:アニータ・カブリオーリ(Anita Caprioli)
※ネッロの恋人

フルラン医師:ジュゼッペ・バッティストン(Giuseppe Battiston)
※ネッロの考えに賛同する、強力な助っ人

ヴェッキオ医師:ジョルジョ・コランジューリ(Giorgio Colangeli)
※施設の医師。

ジージョ:アンドレア・ボスカ(Andrea Bosca)
※少し内気でイケメンの好青年。

ルカ:ジョヴァンニ・カルカーニョ(Giovanni Calcagno)
※ジージョの相棒。問題行動が指摘されているが純粋な男。

ファビオ:ピエトロ・ラグーザ(Pietro Ragusa)
※理屈屋でプライドが高いが数字や細かい事柄に強い。

ゴッフレード:カルロ・ジュセッペ・ガバルディーニ(Carlo Giuseppe Gabardini)
※明るく、何事も前向きなメガネの青年。


ルイーザ・ナターシャ・マッキーニズ(Natascia Macchniz)
※黒髪が美しく笑顔のすてきな女性。ファッショに興味あり。


オッシ:フランコ・ピストニ(Franco Pistoni)
※大柄でギョロ眼の男性。色分けが得意。


ニキ:ミケーレ・デ・ヴィルジリオ(Michele De Virgilio)
※バリバリの肉食系男性。オートレースが大好き。


ミリアム・ダニエラ・ピペルノ(Daniela Piperno)
※赤毛のキュートな女性。ラジオをよく聴いている


カルロ:フランコ・ラヴェラ(Franco Ravera)
※奇跡を呼ぶ男。


ロビー:アンドレア・ガッティノーニ(Andrea Gattinoni)
※眼光鋭い寡黙な男性。


※名前の表記はパンフレット/DVD/インターネットの情報を元にしています。
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2012年8月28日 (火)

映画「人生、ここにあり!」主なあらすじと紹介・感想:

 1983年、イタリアのミラノ。労働組合員のネッロは型破りな言動がアダとなり、移動を命じられる。こうして彼がやってきたのは「協同組合180(Cooperativa 180)」だった。

 そこは組合とは名ばかりの場所で、実態は精神病患者たちの受け入れ施設だった。施設には医師やシスターたちがおり、入所者は強い治療薬を定期的に飲まされている。また組合が請け負う仕事は、切手貼りやラベル貼りなどの単純作業に限られていた。

 実はこのころイタリアでは、法律によって精神病院が次々と閉鎖されていた。だがさまざまな事情で家族と暮らせない人々は行き場を失い、施設に集まっていたのだった。

 間もなく協同組合180を訪れたネッロは、誰も予期していなかった行動を起こす。まず彼は入所者たちを「さん」づけで呼び、1人1人を組合員として丁寧に扱う。また入所者のルカが興奮して殴ってきたときは、施設の医師に「転んだ」と告げて彼をかばう。こうしてネッロは入居者たちとの親交を深めていく。

 あるときネッロは入所者の1人で、はにかみ屋の青年ジージョから束ねた封筒を受け取る。切手は一見、無造作に貼られているようだったが実は違っていた。ネッロが封筒をパラパラ漫画の要領でめくると、切手が美しい渦巻き模様を描いたのだ。ジージョには芸術的な才能があった。

 入所者たちの可能性に気づいたネッロは、組合会議を開き、組合員である入所者たちにある提案を行う。それは今後の彼らの運命を大きく左右するものだった――。

 実在の人物、実在の共同組合をもとにした物語。原題"Si puo` fare(やればできる)"はネッロのモデルとなった、ルドルフォ・ジョルジェッティ氏の言葉から取られています。「人間の尊厳」とか「自由」という言葉では表現しきれない作品です。

「エンジェル・アット・マイ・テーブル(1991年/フランス映画)」や「カッコーの巣の上で(1975年/アメリカ)」と共通するジャンルの物語ですが、湿気のないノリが特徴的。パンフレットによると、本作のジュリオ・マンフレドニア監督は、コメディに定評があるのだとか。繊細なテーマを扱いつつ、絶妙のタイミングで笑いを誘うため、エンターテインメント性も抜群です。

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映画「人生、ここにあり!」オリジナル・スタッフ

オリジナル・スタッフ


監督:ジュリオ・マンフレドニア(Giulio Manfredonia)
原案:ファビオ・ボニファッチ(Fabio Bonifacci)
脚本:ジュリオ・マンフレドニア/ファビオ・ボニファッチ
撮影監督:ロベルト・フォルツァ(Roberto Forza)
編集:チェチリア・ザヌーゾ(Cecilia Zanuso)
美術:マルコ・ベッルツィ(Marco Belluzzi)
衣装:マウリツィ・ミッレノッティ(Maurizio Millenotti)
録音:ブローノ・フッパロ(Bruno Pupparo)
音楽:ビヴィオ&アルド・デ・スカルツィ(Aldo De ScalziPivio)

※映画パンフレット及びインターネットの情報を元にしています。

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