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2011年9月16日 (金)

絵本「たまご(L'Oeuf)」ガブリエル・バンサン作

【あらすじ】
あるところに卵が産み付けられる。十数階建てのビルほどの巨大な卵だ。ある日、人間がその卵を見つけたことから騒動が巻き起こり……。
「アンジュール」「セレスティーヌ」など数々の名作絵本を生んだ、ガブリエル・バンサンによる文字のない絵本。1986年出版。

【感想】※完全なネタバレを含みます

 ある日、砂漠のような場所に卵が現れます。産み付けた動物の正体も、産み付けられた時期も場所も分かりません。しかし気づいたときには高層ビルと同じくらい大きな卵が、そこにありました。

 卵が発見されて以来、野次馬は日を追うごとに増えていきます。やがて、自動車で見学に来る人たちも現れ、卵の周りには渋滞の列ができます。さらに建設機械が持ち込まれ、そばにはビルが建設されます。

 変化はそれだけに留まりません。卵の「登頂」を試みる一団がてっぺんに旗を立て、脇に昇降用の階段やロープウェイを設置します。卵をそっとしておこうと声を上げる人はいません。皆が自分のやりたいことを優先させます。それが「卵」であり、命だと分かっているにもかかわらず……。

 間もなく、黒い雲の切れ間から大きな鳥が現れます。鳥は必死の形相で人間たちを追い払い卵を守ろうとします。するとそのとき殻が割れ……。

 殻を破って出てきたのはヒナでした。しかしヒナは人間たちが騒いだせいでひどく弱っています。よろよろと歩いたかと思うと、倒れて動かなくなってしまいます。人々は一瞬固まりますが、あろうことか生まれてすぐに息絶えたヒナに怖ろしい仕打ちをするのです。

 これを見た母鳥は、仲間の鳥たちと共に戻ってきます。母鳥の瞳は怒りに満ち、人間を鋭く睨んでいます。この反撃に、もはや人間は為す術がありません。彼らは無力です。人々は欲望を優先させた結果、自分たちの暮らす世界に制御不能のモノを数多く抱えてしまったのです。

物語はここで終わります。その後、人間たちはどうするのでしょう?
制御不能の事態に陥った原因は他者のせいだと責めるのか?
これ以上卵を増やさないため問題と向き合い、生活を改める方向へ舵を切るのか?

この絵本を買い求めたのは15年ほど前です。25年前に出版された本作は今、新たな意味を持って語りかけてくる気がしています。

「卵」の絵本はこちらから

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