【あらすじ】
カメラずきティエリー・グエッタはストリート・アーティストとして活動しているのを知り、彼の映像を撮り始める。これをきっかけにティエリーは路上で活動する、さまざまなアーティストと交流し始める。
やがて彼にはある想いが芽生える。それは伝説のストリート・アーティスト、バンクシーの活動を記録することだった。真実と空想が絶妙のバランスで交錯する、極上のドキュメンタリー系エンタテイメント作品。
【感想】※ネタバレを含みます
ロスで古着店を営むティエリーはいとこのアート活動を記録し始めたのをきかっけに、さまざまなストリート・アーティストと出会います。彼は大胆です。初対面の相手にも臆さずカメラを回し、見張り役を行い、高い屋根に登ってアート活動を手伝います。
まず、ここで前半の大きな見所。さまざまなアーティストの活動が次々と紹介されます。タイルアートをあちこちに貼り付けるスペース・インベーダー。「OBEY(服従)」の文字入りステッカーを100万枚もばらまいたシェパード・フェアリー、路上にできた影をなぞるゼウスなど、手法もさまざまです。
ガードの堅いアーティストたちの信頼を得たティエリーは、とうとう伝説のバンクシーと出会います。
バンクシーはイギリス出身のストリート・アーティスト。年齢も本名も、素顔さえ謎です。2005年、パレスチナ自治区を取り囲む壁に空や風船を持つ少女の絵を描き、世界的な注目を集めました。
中盤以降の見所は、バンクシーと出会ったあとのティエリーの変化です。あることがきっかけで、彼はバンクシーからアート活動するよう命じられ、物語は皮肉な展開を迎えます。なんと、ティエリーが大成功を収めてしまうのです。
個展の経験もないティエリーが大型の施設で作品展を開くことを決め、行き当たりばったりのやり方で作業を進めます。ティエリーの頭にあるのは金儲けだけ。作品への愛着もないので、作品の扱いもテキトーです。会場にはどっかで見たことがあるような、オリジナリティとは無縁の(でも額装は立派なので、それらしく見える)作品が並べられます。
一例を挙げると、会場の中央にあるのはキャンベル・スープの缶によく似たスプレー缶があり、壁には目頭や口に明るい配色をほどこしたセレブのシルクスクリーンがあります。はっきり言ってウォーホルのパクリです。しかし訪れた人々はティエリーを絶賛します。レイアウトも内装も、雇われた職人たちによるものだとも知らずに。
ティエリーに熱狂する人々の様子に、初めは「バカな人たちだ」と思いました。モノマネを絶賛するなんて滑稽だとすら感じました。彼らは「つまらないモノをつまらない」「モノマネをモノマネ」と言う勇気がないのか? バンクシーお墨付きのティエリーを否定すると「感性が鈍い」と言われるのが怖いのかと。
でも、しばらくしてバカは自分のほうかもしれないと思いました。私は美術への造詣が深いわけではありませんが、ウォーホルの代表的なモチーフくらいは分かります。ただ、それは余計な知識なのかもしれません。
余計なウンチクはいらない。いいモノはいい、つまらないモノはつまらない。好きなモノは好き、嫌いなモノは嫌い。意味のないモノに意味を見い出そうと理屈をこねるのはダサい。知識人ぶるな。知識をひけらかすな。そういう奴らはダサいぜ!
映画からはそんな、痛烈な皮肉を感じました。
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